歯科Q&A
 Q1 入れ歯について
 Q2 フッ化物の上手な使い方レッスン
 Q3 だらだら食べ・飲みはやめましょう
 Q4 成人歯科健康診査の目的と効果を教えてください
 Q5 歯槽膿漏とはどのような病気なのですか?
 Q6 入れ歯の日常の手入は、どのようにすればよいのですか?
 Q7 むし歯を防ぐ魔法の液体(唾液)
 Q8 6才臼歯が大切って本当ですか?
 Q9 全身疾患(生活習慣病)と歯科診療との係わり
 Q10 指しゃぶりを続けているとお口の健康に害があるのでしょうか?
 Q11 妊娠中はむし歯になりやすいと聞きますがほんとうですか?
 Q12 最近、顎関節症ということがよく言われますがどういう病気ですか?
 Q13 歯周病と全身との関係
 Q14 口の中の酸性雨
 Q15 歯周病における定期検診(メインテナンス)の重要性
 Q16 「フッ素塗布しても、虫歯になりますか?」
 Q17 砂糖さえ入っていなければ良いおやつ?
 Q18 たばこをやめたい人へ
 Q19 歯を抜いた後、なかなか出血が止まらない時があります。大丈夫でしょうか?
 Q20 12歳臼歯を守りましょう!
 Q21 おしゃぶりはいいとか、悪いとか 聞くけれど 本当はどうなの?
 Q22 噛むことと消化吸収能力
 Q23 予防歯科って なあに?
 Q24 今、子どもたちの体に何が起こっているのか?
 Q25 歯の再石灰化とはどんなこと?
 キシリトールQ@ キシリトールって、なんですか?
 キシリトールQA キシリトールは、どうして歯によいのですか?
 キシリトールQB 虫歯菌を減らすとのことですが、ヒトの身体に害や副作用はないのでしょうか?
 キシリトールQC なぜキシリトールは、パーセントにこだわるのですか?
 キシリトールQD 子どもにキシリトールを食べさせていたら、虫歯のない子に育ちますか?




Q1 入れ歯について
A1
虫歯や歯槽膿漏で歯を失った場合、その部分に人工の歯をいれなければなりません。入れ歯には部分入れ歯と歯を全部失った場合の総入れ歯とがあります。なぜ入れ歯を入れなくてはならないのでしょうか?歯が抜けたままでいるとうまく食べ物が食べられませんね。食べられないと栄養がとれないので栄養失調になってしまいます。また、噛まないで食べると食べ過ぎて肥満の原因にもなるといわれています。歯を1本でも失って、入れ歯を入れないで歯を抜けたままにすると、個人差はありますが、半年から1年で歯が抜けた部分に歯が移動してきます。支えがなくなった歯の両隣の歯が倒れてきて、同時に噛み合わせの歯がなくなることで、残された上下の歯が伸びてきて噛み合わせが悪くなります。
噛み合わせが悪くなることで頭痛や耳鳴り、肩こりなどが起こる場合がありますので、噛み合わせは非常に大事です。噛み合わせを治すことでこのような病気は治ることが多いので、歯を失ったら入れ歯やブリッジを早期に入れるようにしましょう。
さらに歯が少なくなると残った歯に大きな負担がかかることになり、健全な歯の寿命を縮めてしまいます。噛めないから柔らかいものばかり食べていても、顎の骨や筋肉が衰えて顔つきが変わったり、噛む回数が減ることで唾液が減少し、口の殺菌効果が弱まったり、口臭の原因にもなったりします。
また、歯を失ったままでいると審美的にも良くないし、発音するときも歯がなくなった部位から息が漏れて聞き取りにくい発音になります。歯を失ったら早く入れ歯やブリッジを入れることをお勧めします。
最近、良く噛むことは認知症防止にも役立つことがいわれています。まず、虫歯や歯槽膿漏で歯を失わないようにすることが大事です。ブラッシングし、入れ歯にならないように、定期的に歯科医でチェックしてもらうことが必要です。

Q2 フッ化物の上手な使い方レッスン
A2
低濃度のフッ化物(100〜900ppm)を家庭で使う→フッ化物入り歯みがき剤の利用
高濃度のフッ化物(9000ppm位)を年に数回、歯科医院にて塗布する→大田区民の幼児歯科健診およびフッ化物塗布の受診券を活用し、さらに「歯の健康」を!

Q3 だらだら食べ・飲みはやめましょう
A3
飲食と脱灰(歯の表面の破壊=むし歯)、その再石灰化(自然治癒)について
飲食後にお口の中のpH(酸性・アルカリ性の度合)は直に酸性になりむし歯をつくりやすくします。お口の中では、脱灰と再石灰化を繰り返しています。
できるだけ脱灰する環境にならないように(短時間)しましょう

Q4 成人歯科健康診査の目的と効果を教えてください
A4
成人歯科健康診査は歯周疾患の予防と早期発見、早期治療を推奨するとともに、口腔清掃の徹底を図り、口腔機能の向上を図ることを目的としています。口腔機能の向上とは噛む力を増やし、食べ物を口の中でまとめて飲み込むという、ごく当たり前な営みを維持し続けるということなのです。「噛む」という動作を習慣的に続けていくと脳への血流量が増え、認知症を予防できたり、身体の平衡感覚(バランス)を保持して、転びそうな時に踏みとどまることができるようになります。また、発声や会話、咳をする、笑顔を作るなどの日常生活には必要不可欠な機能の維持もできるようになり、介護予防の点でも「噛む」ことは重要となります。

Q5 歯槽膿漏とはどのような病気なのですか?
A5
歯周病は以前、歯ぐきから膿(うみ)が出る病気ということで「歯槽膿漏」と呼ばれていました。現在では様々な症状があることから、「歯周病」と呼ぶようになりました。直接の原因はプラーク(歯垢)です。その中にたくさんいる歯周病菌が引き起こす感染症なのです。そして日常生活のリスクファクター(危険因子)の影響で知らないうちに進行していく生活習慣病なのです。
*歯周病のリスクファクター(危険因子)
■柔らかいもの、甘いものばかり食べる習慣。
→プラーク(歯垢)ができやすい。
■食べ物が歯と歯の間に挟まる。
→歯肉の炎症や顎の骨の破壊。
■歯並び、噛み合わせが悪い。
→歯磨きがしにくいことや、一部の歯のみに負担がかかる。
■口で呼吸する癖がある。
→口の中が乾きやすい。
■たばこを吸う。
→歯肉の血液循環が悪くなることや、歯に汚れが付く。
*歯周病を放置しておくと…
歯周病は知らないうちに進行していき、放っておくと歯ぐきから膿が出たり、痛んだり、歯がぐらぐらになったりして、最後には歯が自然に抜けてなくなってしまいます。

Q6 入れ歯の日常の手入は、どのようにすればよいのですか?
A6
入れ歯が入ると、口の中は今まで以上に食物が残りやすく、不潔になりがちになりますので、食後直ちに入れ歯をはずして、入れ歯と歯の清掃を行ってください。とくにバネのかかる歯や、入れ歯と接触する部分は、ていねいに磨いてください。また歯のない粘膜部も、柔らかい歯ブラシや手指でマッサージしてください。
入れ歯の清掃は、普通の歯ブラシで入れ歯の内面外面ともに洗ってください。入れ歯専用のブラシや市販の洗浄剤を使うとより効果的です。口の中にはいろいろな細菌が住んでいます。水にひたしているだけでは細菌や汚れ、臭いを取ることはできません。そのため義歯洗浄剤を有効に利用して清潔な入れ歯を使用するようにして下さい。入れ歯はプラスチック性のものですので、熱や乾燥により変形しますので注意して下さい。入れ歯は70℃以上の温度で歪んでしまいます。

Q7 むし歯を防ぐ魔法の液体……(唾液)
A7
唾液にはいろいろ重要な役割がありますが主なものは消化作用です。その他の役割としては口の中の歯の清掃、歯肉、粘膜をしめらせて食物をうまく噛んで飲みこむこと、発音などをスムースに行なえるようにしてくれます。また唾液には食べた物がこなれて発酵して酸を作るときに、この酸を中和して口の中を中性に保ち、むし歯を予防してくれる重要な役割があります。むし歯を予防するにはハブラシはもちろんのこと、時間を決めておやつを与え、規則正しい食生活をすることが大切です。
唾液の量を多くするには良く物を噛むこと、又、いかにしてストレスを避けるかが大切です。また唾液には発ガン物質を抑制する作用があります。したがって良く噛むことがガンの予防になるとも言えます。

Q8 6才臼歯が大切って本当ですか?
A8
永久歯(大人の歯)が初めてお口の中にでてくるのは、6才頃乳歯列の奥に乳歯より一回り大きな歯が頭を見せます。この歯は、一生涯使う一番寿命の長い歯で、噛む時一番力の入る強い歯、さらに顎の高さを決める大切な歯です。生え初めは奥の低い位置にあり、溝が深くてむし歯になりやすいのでていねいに磨いてください。
又、乳歯が早く抜けてしまうと、この6才臼歯が前によってきて永久歯がきれいに生えることができず、いわゆる乱杭歯(らんぐいば)になってしまいます。
子供は大人と違い成長発育の途中にあるため、むし歯の影響も大きくなりがちです。乳歯も6才から生え始める永久歯も同じように大切にしましょう。

Q9 全身疾患(生活習慣病)と歯科診療との係わり
A9
その1 糖尿病
糖尿病は持続的な高血糖値(300mg/dl以上)を示し、微小血管障害や動脈硬化性障害をきたす病気です。糖尿病がある方の歯科診療時の問題点としては細菌に感染しやすくなること、傷が治りにくくなること、歯科診療時の緊張により血糖値の変化があることなどです。また虫歯や歯周病などにより、咬む力が低下して食事が摂りづらくなると、血糖値のコントロールも不良になり問題となります。
歯科診療では歯を削る、歯を抜くなど、緊張を強いられる要素が多く、糖尿病のある方ではわずかな処置でも血糖値が異常な高値(300mg/dl以上)もしくは低値(50mg/dl以下)になり昏睡をきたすこともあります。内科医の適切なコントロールを受けている方は歯科治療に際しそんなに心配する必要はありません。ただし食事摂取の時間と治療薬の特徴をよく考えて、歯科診療を受ける必要があります。朝食または昼食を摂らずに糖尿病治療薬を使用して来院すると、治療時間中や待合室で待っている時でさえも低血糖症を引き起こす可能性があります。
全身的な病気の有無によって、治療時に使う局所麻酔薬や処方する薬剤の種類が異なる場合がありますので、糖尿病の治療を受けている方は必ず歯科医師に状況をお伝え下さい。

その2 高血圧
高血圧の方はその病態の程度によって歯科診療における注意事項が異なります。医師により高血圧と診断され降圧剤を服用して正常範囲内にコントロールされている場合は、通常の歯科治療は問題ないでしょう。薬の服用を考慮して午前中の受診が望ましいでしょう。抜歯な緊張の多い治療を受ける場合、不安であれば必ず歯科医師とよく相談してください。
また高血圧の治療薬の種類によっては、その副作用として口渇、味覚障害、口内炎、歯肉肥大などがみられ歯科治療に支障をきたす場合があります。服用している薬の種類を教えていただき歯科医師が必要と判断すれば、内科医と相談して薬を変更していただくこともできます。
現在高血圧の治療を受けていても血圧のコントロールが不良であったり、以前高血圧と診断されその後放置して状況が悪い場合は、高血圧の治療を優先し歯科治療は応急処置に留める必要があります。高血圧は虚血性心疾患、脳血管障害や腎障害等の発症危険因子であり、血圧がコントロールされていない状況下で歯科治療を受けることは望ましくありません。

Q10 指しゃぶりを続けているとお口の健康に害があるのでしょうか?
A10
生後間もない新生児の「吸う」という行為は、ほ乳のための本能的、反射的行動と考えられています。しかし、指しゃぶりを長く続けると、上下の前歯の間に大きなすき間があいてきたり、出っ歯になってくる事があります。こうなると、食物を飲み込む時、そのすき間に舌をはさみ込んだりして、普通と違う舌の癖が出やすくなります。また、くわえ込んだ指に吸いダコができたりする事があります。
このように、指しゃぶりは、歯並びや顎の発達に影響を及ぼしたり、汚れた指をくわえる為、衛生上も問題となってきます。さて、こんな時お母さんは、単に叱ってヤメさせようとしますが、2才位までは、歯並びに異常なく明るく元気で過ごしていれば少し様子をみてよいでしょう。
やめさせる時期としては、幼稚園や保育園への入園や、妹・弟が誕生した時など、子供の生活が変化する時をきっかけとして、指導して行く事が大切です。特に、ガンコな癖になっている時は、歯科医師、言語聴覚士などに相談してみるのもよいでしょう。

Q11 妊娠中はむし歯になりやすいと聞きますがほんとうですか?
A11
つわりによりブラッシングが十分にできなかったり、食べるものの変化などにより、口の中が非常に悪い環境になりやすいためむし歯になります。妊娠すると体内のホルモン分泌の変化がおこり、口腔内にも様々な変化をもたらします。まず始めに、つわりを自覚し、食生活に変化をもたらします。例えば、食事が食べられなかったり、時間帯が不規則になったり、嗜好品などに変化が起こってきます。また、つわりなどによりブラッシングが十分にできないと、口の中は不潔となり、口の中全体を酸性の環境へと変化させます。その結果として唾液の粘着性が増加し、むし歯の原因となる歯垢を増加させやすくします。

Q12 最近、顎関節症ということがよく言われますがどういう病気ですか?
A12
顎関節症は大きく口を開けようとした時、あごの関節に痛みを生じたり、大きく口を開けようとすると関節部にひっかかりがあり、それ以上、口が開かなかったり、また口を開けたとき、カックンなどの音を生じたりするあごの関節の病気です。
原因はさまざまな因子が重なりあって生じるためにこれといって限定するのは難しいのですが、心理的ストレスと噛み合わせが悪いために起こることが多いようです。
あごを動かしているのは筋肉ですが、心理的ストレスと噛み合わせの異常により、その筋肉が刺激されてあごが変な動きをするようになります。「歯ぎしり」もその一つと考えて良いでしょう。ちょっとした噛み合わせの悪さがひきがねとなり、時間をかけて悪い方へと進んでいき、あげくのはてにあごの関節やその周辺の筋肉などが痛くなるのです。
治療は薬(鎮痛剤、筋弛緩剤など)や、必要に応じて口のなかに薄い入れ歯のようなものを入れます。治るまでの期間は症状により差があり、数ヵ月から数年かかることもあります。初期のものであれば治りますが、何年もたっての症状の進行したものであるならば、多少症状の残る場合や手術が必要になる場合もあります。

Q13 歯周病と全身との関係
A13
歯や歯ぐきの病気とからだの他の部位が相互に影響を及ぼすことは、あまり知られていません。
特に歯周病は気づかないうちに進行してしまう病気で、ときに全身に影響を及ぼします。虫歯や歯周病が悪化すると、歯がぐらぐらしたり、抜けてしまって噛み合わせが不十分になるために、胃腸障害や栄養障害も起こしやすくなります。特に著しく免疫力の低下した人では、歯周病の細菌自体が血液中に侵入して、菌血症や敗血症になったりして心内膜炎を引き起こすこともあります。また、腎臓に感染して腎炎を起こしたり、高齢者や食べる機能に障害がある人が、眠っている間に歯周病菌を含んだ自分の唾液を誤嚥してしまい、肺炎をおこしてしまうこともあります。さらに糖尿病の人は、歯周病にかかると、重症になりやすいことが知られています。その人に歯周病治療をすると、血糖値コントロールが改善されることが報告されており、歯周病には糖尿病に影響する要素があることも考えられています。その他、歯周病と低体重児出産、冠状動脈疾患などとの関係も示唆されています。
歯周病を口の中だけの病気などとあなどっていると、全身の他の病気を引き起こしかねないので注意が必要です。

Q14 口の中の酸性雨
A14
現在、酸性雨によってアサガオの花が脱色されたり、エサになる虫が死滅しマスの親が共食いを始めたり、魚が住めない死の湖ができたり、大理石で造られた遺跡の像が溶け出したりということが世界各地で起こっています。このような環境汚染は、局地的に起こっているのではありません。地球規模で起こっているのです。例えば、湾岸戦争の油井火災やフィリピンのピナツボ火山噴火の影響が数日後には日本に現れます。地球の裏側で起こった出来事が、風に乗って大気汚染をもたらすのです。私たちの地球が実は、閉鎖系であり、「宇宙船地球号」と呼ばれる由縁です。
話を口の中に転じてみますと、6歳臼歯に一本虫歯ができると、反対側の6歳臼歯にも虫歯ができてしまいます。これは歯は一本ずつ独立して虫歯ができるのではなく、一本でもできるということは、口の中全体が虫歯ができる環境にあるということです。例えば甘いお菓子は一本の歯だけでは食べられません。虫歯になっていない歯も使って食べているのです。
すなわち、口の中も地球と同じ一つの閉鎖系、言い換えると小宇宙(ミクロコスモス)なのです。考えてみれば酸性雨によって地球規模で木々の葉が枯れています。ミクロコスモスの口の中でも、酸によって歯が溶かされて虫歯ができます。皆様方のお口の問題を、地球規模の環境汚染とからめて考えてみましょう。

Q15 歯周病における定期検診(メインテナンス)の重要性
A15
歯周病は細菌による感染症です。その細菌は歯垢の中に存在しています。一通り歯周病の治療が済んで歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝のことを言い、3ミリ以下が正常である)が浅くなった、歯茎から出血がしなくなった、ぐらつきが落ち着いてきたからといって、安心するのは要注意です。高血圧や糖尿病の患者さんの数値が正常値になったからといって、それで医者に通院するのをやめるでしょうか。必ず定期的に受診するはずです。歯周病も同じです。毎日丁寧にブラッシングをしていても知らず知らずのうちに汚れが溜まってきます。それによって再び歯茎から出血したり、歯周ポケットが深くなってくるかもしれません。治療後の状態を維持安定させるためにも定期的に(状態によって間隔は変わり、1〜6ヶ月に一回)検診を受け、クリーニングをすることが大切です。

Q16 「フッ素塗布しても、虫歯になりますか?」
A16
虫歯は、お口の中にいる細菌、歯(歯の形と質)、糖質(砂糖、果糖等)と時間の経過が関わりあって発生します。
フッ素には、歯質を強化し、耐酸性を向上させるとともに、歯垢中の細菌の酸産生を抑制する働きがあります。しかしフッ素塗布だけでこの全ての条件を改善する事は困難であり、間食等のとり方や飲料類の飲み物など糖質摂取の改善、歯ブラシ等による歯垢の除去など生活習慣を全体的に改善する事で虫歯を予防できます。

Q17 砂糖さえ入っていなければ良いおやつ?
A17
虫歯になりにくいおやつと言うと、砂糖が少なくて歯にくっつきにくいものと考えがちですが、全身の健康を考えた時にそれで良いのでしょうか?
それでは以下にあげる虫歯以外の12の物差しからおやつについて考えて見ましょう。いろいろな観点からよいと思われるおやつを列挙してみましょう。
1.塩が多く含まれていないもの
2.油が多く含まれていないもの
3.味の濃くないもの
4.カロリーがあまり高くないもの
5.栄養のバランスがよいもの
6.後で食べる食事の量に影響のないもの
7.やめられる、とめられる(やめられない、止まらないの逆)
8.着色料など食品添加物の入っていないもの
9.なるべく自然のもの
10.歯ごたえのあるもの
11.唾液がたくさん出るもの
12.母親の愛情のこもっているもの
等々…。
もっとたくさんあるでしょうが、とりあえずこれらの条件を満たしていれば、良いおやつといえるでしょう。
子どもたちにとっておやつは重要な栄養補給源です。三度の食事と同様に良質
な物を与えたいものです。

Q18 たばこをやめたい人へ
A18
タバコを「やめようと思っている」「できたらやめたいと思っている」「減らしたいと思っている」方は60%を超えています。特に歯周病や治療のためにもタバコをやめようと思っている方は、かかりつけ歯科医、保健所や禁煙支援プログラムのある病院にご相談ください。
東京都8020運動推進特別事業のかかりつけ歯科医禁煙支援プログラム:「健康をむしばむ喫煙の害」(東京都健康局)を研修した歯科医師による「かかりつけ歯科医禁煙支援プログラム」を行う推進医療機関が大森歯科医師会会員診療所にもあります。ご相談ください。

Q19 歯を抜いた後、なかなか出血が止まらない時があります。大丈夫でしょうか?
A19
口の中には唾液があり、なかなか血が止まりにくいことは確かです。また、抜く歯や歯肉の状態(歯肉炎、歯周炎)、内科的疾患とくに血液疾患、心臓病、肝臓病、腎臓病、糖尿病などがある場合は止まりにくいこともあります。またうがいをしすぎたり、お酒を飲んだり、タバコを吸ったりすると血は止まりにくくなります。

Q20 12歳臼歯を守りましょう!
A20
12歳臼歯って、知っていますか?
第二大臼歯といって12歳ごろに生える、前から数えて7番目の歯です。第一大臼歯の後ろに、12歳頃に生えてくるので通称12歳臼歯ともいいます。小学校の低学年頃まではお父様、お母様もお子さんの口の中を見ていることが多いですよね。
しかし、第二大臼歯が生える小学校高学年から中学生の頃はほとんど見ていらっしゃらないと思います。ここで6歳臼歯(第一大臼歯)が生えた頃のことを思い出してみてください。歯肉の中から少しだけ顔を出している歯は強く磨こうとすると子どもは痛がるし、永久歯の奥歯は深い溝がたくさんあって磨きにくかったことを。実は12歳臼歯が生えてきたときも、同じ状況が口の中で起こっているのです。
それなのにもちろんお父様、お母様による仕上げみがきはしていません。(もちろんしなくていいのですよ。歯みがきも自立してもらわないと…)。6歳臼歯よりさらに1本分後ろにあって磨きにくい。子どもは遅くまで起きていたり、自分の好きなお菓子を食べていたり、歯をみがくように言っても適当だったり...(自立なのか反抗期なのか…?)
この歯がむし歯になりやすい環境に置かれている現実は十分に納得できますよね。
そこでむし歯にしないためにはどうすればよいのでしょうか? その対策は
@早めにシーラントをしましょう。(シーラントとは歯みがきしても磨ききれない深い溝のところを埋める処置です。保険でできます。)
A12歳臼歯の磨きかたを歯医者さんで習いましょう。
12歳臼歯は口の奥の方にあるので磨きにくいだけでなくて、生える場所が足りないときは変な方向を向いていて、更に磨きにくくなっていることも多いのです。(この更に奥に生える第3大臼歯、通称:親知らずはもっと変な位置に生えてくる確率が高いのをご存知の方も多いと思います。)
Bこれを機会に間食しすぎていない?寝る時間は?と生活を見直すのもいいかもしれませんね。手鏡で口の中の奥のほうをじっくり見るのもいいでしょう。奥歯の方を見たらついでに前歯の歯肉も見てみましょう。この時期は歯肉炎で歯肉が赤く膨れやすい時期でもあります。
むし歯予防と一緒に歯肉炎の予防をしてもらえば一石二鳥ですね。

Q21 おしゃぶりはいいとか、悪いとか 聞くけれど 本当はどうなの?
A21
おしゃぶりに関する報告は数多くありますが、それらを検証して平成17年に小児科と小児歯科の保険検討委員会はおしゃぶりの使用の考え方として次のような指針を出しました。
@発語や言葉を覚える1歳過ぎになったら、おしゃぶりのフォルダーを外して、常時使用しないようにする。
A遅くとも2歳半までに使用は中止するようにする
Bおしゃぶりを使用している間も、声かけや一緒に遊ぶなどの子どもとのふれあいを大切にして、子どもがして欲しいことや、したいことを満足させるように心がける。そして、子育ての手抜きとして利便性からだけでおしゃぶりを使用しないようにする。
結論から言いますと、小児科の先生も小児歯科の先生もおしゃぶりは勧めてはいません。育児のためにどうしても使用する場合は、安全で清潔なもの、お口のサイズにあっているものを選ぶようにしましょう。また、おしゃぶりを長期間使用していると歯並びが悪くなる(前歯が噛みあわさらない:開咬)ことが多いですので、やはり2歳の誕生日を過ぎたらやめるようにした方がいいですね。
でも実際、おしゃぶりをやめるのは簡単なことではありません。子どもにとっても好きなものを取り上げられることは大変なことですし、それに頼っていた親にとっても大変なことです。もしどうしても止めやめられないときは歯医者さんに相談してみてくださいね。

Q22 噛むことと消化吸収能力
A22
若年者で、よく噛んだ場合と、噛まない場合の種々の食物の若年者における平均消化吸収効率を比べると、よく噛まない人に比べ、よく噛む人のタンパク質・脂肪の平均消化吸収効率は10%高いと言われています。また、食物繊維では40%差があります。
ただ、これは若年者(13歳〜19歳)での研究です。この時期は生涯の中でもっとも体の機能が旺盛な時期なので、消化吸収能はもっとも高いと考えられます。
それでは、年齢とともに消化吸収能力はどの様に変化するのでしょうか?唾液分泌力・胃液分泌力・膵液分泌力・糖質の消化吸収力・脂質吸収力・大腸のぜん動運動などの機能が低下します。
この様に消化吸収能が低下してくるからこそ、良く噛めるという事が必要になると思われます。

Q23 予防歯科って なあに?
A23
今までの歯科治療では「虫歯になったら削って詰める。痛みなく噛めるようになったらそこで治療は終了」というのが当たり前でした。これからは、虫歯や歯周病を未然に防ぐために、健康な人が健康な状態を維持するために、歯科を利用する時代です。健康であることは、豊かな生活を営むために最も必要なことのひとつですので、早い時期から予防歯科治療を受けることをお勧めします。

Q24 今、子どもたちの体に何が起こっているのか?
A24
2004年、厚生労働省、文部科学省、農林水産省による「食を通じた子どもの健全育成のあり方に関する検討会」がとりまとめた報告書には、家庭や環境の変化がもたらした、子どもたちの食生活をめぐる様々な問題点が提起されました。報告書ではさらに「子どもの変化」として、肥満と思春期やせという二極化、朝食欠食、塾通いなどによる不規則な食事リズムなどが取り上げられています。
特に問題なのが、肥満の子どもの増加です。1970年にわずか約3%だった学童期の肥満が、この30年間で約10%に増加。文科省が毎年、調査している「学校保健統計調査」によると、現在では、小・中学校の10人に一人が肥満といわれています。そこで、子どもの食を取りとりまく問題を考える「キーワード」として「5つの「こ」食」が考えられます。
●孤食 1人で食べること。一人での食事は、唾液の分泌や胃腸の働きを低下させるといわれている。単調な料理の組み合わせになることも。
●固食 毎日同じようなものしか食べないこと。結果的に自分の好きなものだけを食べるようになり、栄養のバランスが悪くなる。
●粉食 パンやスパゲッティーなど粉を使った主食を好んで食べること。軟らかい食品が多く噛む力が弱くなり、集中力が持続しなくなる可能性も。
●個食 家族が揃っているにも関わらず、同じものを食べないで各自が好きなものを食べる事。栄養が偏り、きちんとした味覚が育たない事も。
●小食 食べる量が少ない事。過食も問題だが、小食過ぎるのもまた問題。空腹を早く感じる為、間食する回数が増えてしまうケースも。
子どもの肥満の70%は、大人の肥満に移行すると言われています。子どもの頃からきちんとした食生活を身につけたいものです。

Q25 歯の再石灰化とはどんなこと?
A25
最近CMでもよく耳にする歯の再石灰かとはどんなことかご存知ですか?
甘いものを食べると歯についている細菌がそれを利用して酸を作ります。酸のPHが5.5以下になると歯のカルシウムが溶けだしてしまい、虫歯になってしまうのです。しかし、唾液にあるカルシウムが溶かされた歯の表面に再び付着して、元の状態に戻そうとするのですね。これを歯の再石灰化というのです。
また、歯の表面にフッ素を作用させると唾液のカルシウムが特に歯に付着するのです。特に乳歯や永久歯などが生えてきた時期にフッ素を歯に塗布することや、フッ素入り歯磨き粉を使うことは、虫歯を予防するのに非常に効果的で、虫歯に少しなりかかった状態でも一生懸命歯を磨けば再石化が起こり虫歯にならないですむのですね。頑張りましょう!ブラッシング!!

「キシリトールって、なあに? Q&A」
最近よく耳にするキシリトール。キシリトールは歯の健康によいとか虫歯を防ぐ甘味料、といわれていますがよく考えみると不思議ですね。キシリトールがなぜ虫歯予防に役立つのか、多くの患者さんから聞かれる疑問・質問にお答えしながら、解説したいと思います。 

キシリトールQ@ キシリトールって、なんですか?
Aキシリトールは、白樺やブナなどに含まれる甘味料です。またキシリトールは天然の食品中にも多く存在し、いちご100g中362r、カリフラワーなら300rも含まれています。
ヒトの正常血液100ml中にも0.05rくらいのキシリトールが存在するんですよ。このようにキシリトールは、合成甘味料ではなく天然素材の甘味料ですから、小さなお子さんからお年寄りまで、安心して使っていただけるのです。

キシリトールQA キシリトールは、どうして歯によいのですか?
Aキシリトールは、
@虫歯のもとの「酸」を発生させない
A虫歯の予防を助ける唾液の分泌を促す
Bフッ素やカルシウムと結びついて歯の再石灰化(初期の虫歯を修復したり、歯の質を硬くすること)を促す
C虫歯菌の中のとくにミュータンス菌の力を弱め数を減らす
Dプラークをさらさらにする
などの歯によい多くの作用がありますが、もっとも大きな理由は、虫歯のもとの「酸」ができないことです。
ヒトが食事をすると、口の中にいる虫歯菌が食品中の砂糖などをエサにして「酸」を発生させ、この「酸」が歯のエナメル質を溶かし穴をあけ虫歯になります。ところが虫歯菌の中にもいくつか種類があって、中でも、特に力が強い菌として有名なのがミュータス菌です。ミュータンス菌が出すネバネバは、水に溶けないので、ミュータンス菌がつくる歯垢(プラーク)は、家庭でのブラッシングだけではなかなか落としきれません。またミュータンス菌は、体内に「酸」を押し出すポンプをもっていて、プラーク中のPH(ペーハー)をびっくりするほど強い酸性にすることができます。ところがミュータンス菌がキシリトールを食べても酸をまったく作れません取り込まれたキシリトールは、ミュータンス菌の体の中を通過して、そのままの形で菌の外に出てきてしまいます。そのためミュータンス菌は、虫歯のもとの「酸」を発酵できないだけでなく、自分の菌体内でキシリトールを無駄に代謝するため、力が弱まり最終的には数が減ってしまうのです。歯を一生懸命磨いてもなかなかプラークが落ちない方は、1日3回、食後にキシリトールガムを5分間、2週間かみつづけてみてください。プラークがサラサラになるのを実感できることと思います。

キシリトールQB 虫歯菌を減らすとのことですが、ヒトの身体に害や副作用はないのでしょうか?
A 一度に大量のキシリトールを摂取すると、一時的に下痢をする場合がありますが、それ以外は、身体にはまったく害はありません。小さなお子さんや、初めてキシリトールを口にする方は、必ず1粒から始め、下痢をしないことを確認しながら、徐々に増やすことが大切です。とくに小さなお子さんの場合、包丁などで半分の大きさに切って半粒与え、2〜3日下痢をしないかどうか確認し、その後は半粒ずつふやして、徐々に1日3粒噛めるようにもっていきます。
キシリトールは、一度に大量に摂るよりも、毎日少しずつ頻回に摂取すると効果的です。

キシリトールQC キシリトール入りのガムに、キシリトール55%だとか100%と書いてありますが、なぜキシリトールは、パーセントにこだわるのですか?
Aキシリトールで虫歯予防をするには、ガムなどの全糖質中キシリトールが50%以上含まれている製品でないとその効果があるとはいえないという研究結果が出ています。またミュータンス菌の数を減らしたい、あるいは虫歯予防効果をあげたいのであれば、1日1〜14gのキシリトールを摂取することがのぞましいといわれています。これだけの量を摂取するには、他の余分な甘味料をふくまないキシリトール100%のもののほうが、能率的で効果的だといえます。今後はぜひパーセントと量にもこだわって、パッケージの裏の成分表などにも目を通してみてください。

キシリトールQD 私は子どもの頃から歯が弱く、虫歯で悩んできた、3才と1才の子どもの母親です。二人の子どもに、キシリトールを食べさせていたら、虫歯のない子に育ちますか?
A おそらくお母さまの口の中には、ミュータンス菌がいると思われます。ミュータンス菌はいくら注意していても、酸をだす力が強く、ねっとりとしたプラークのせいで、磨いても磨いても汚れがとれません。またミュータンス菌は、生まれたばかりの赤ちゃんの口の中にはいませんが、お母さまの唾液などを通して子どもにも感染します。お母さまの口の中にミュータンス菌がいたとしても、下の1才のお子さんには、おそらくミュータンス菌はまだうつってはいないのではないでしょうか。もしミュータンス菌の母子感染を防ぐのであれば、お母さまと上のお子さんがキシリトールを定期的に摂取したほうが、下のお子さんへの母子感染を防ぐ効果は高いのです。虫歯を歯医者さんでしっかりと治されてから、キシリトールを1日3回以上食後に5分間噛んでみてください。2年間噛み続けた人のミュータンス菌は、生涯をとおしてその力を減らすことができるといわれています。またフィンランドでは、お母さまがキシリトールガムを噛んでいたグループの母子感染率が、フッ素やクロルヘキシジンという殺菌薬を歯に塗ったグループよりも、少なかったという有名な研究報告がだされています。
しかし虫歯予防に最も大切なことは、まず虫歯を治療すること。そして日々の歯みがきと正しい食生活です。その上でキシリトールを使えば効果的ですが、キシリトールだけ噛んでも、決して虫歯は防げないことをぜひ覚えていていただきたいと思います。